心理的安全性というものの正体

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心理的安全性というものの正体

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2022/02/10 心理的安全性というものの正体


【今月のテーマ】

 

心理的安全性というものの正体

 


 

最近、「心理的安全性」というキーワードが気になっています。

 

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この「心理的安全性」は、

 

Google社が行った労働改革「プロジェクトアリストテレス」において、

 

提唱された考え方で、今、世界中から注目が集まっているようです。

 

Googleの研究結果では、職場での心理的安全性は、定着率を高め、

 

生産性を上げることが分かっています。

 

 

最近読んだある本によりますと、職場において(1)「話しやすさ」、

 

(2)「助け合い」、(3)「挑戦」、(4)「新奇歓迎」の4つの因子

 

があるとき、そこで働くスタッフは、心理的安全性を感じられる、と

 

いうことだそうです。

 

確かに、介護施設などで何か知らないことがあって、上司などにに聞いたり

 

する「経験者だって聞いていたけど、そんなことも知らないの?」と

 

いって馬鹿にされたりすることがあるという話を、以前、ある介護職員

 

の方から聞いたことがあります。

 

このような職場では「無知」が攻撃の対象になります。

 

こうなると、何か分からないことがあってもだれも質問しなくなります。

 

分からないなりに自分のやり方でどんどんと突き進んでいきます。

 

それが理念や方向性と合っていれば良いですが、そうでない場合、生産性

 

が著しく低下します。

 

蛇足になりますが、最近では、福祉介護の世界でも「生産性」という言葉が

 

普通に使われますが、私が10年前に本を書いたとき、出版社の編集者から

 

「そもそも福祉介護に生産性という概念はあるんですか。少なくとも生産性

 

という文言はそぐわないんではないですか。」とチェックが入ったことが

 

ありました。

 

確かにその当時、10年位前は、福祉介護の業界で「生産性」という言葉を使って

 

いた経営者、関係者はごく一部であったかと思います。

 

10年ひと昔、最近ではふた昔ともいわれていますが、実に隔世の感があります。

 

 

話を戻しますと、先ほどの質問しなくなるというのは、(1)「話しやすさ」の対極

 

にあるものです。

 

つぎに、(2)「助け合い」ですが、これはお互いの長所短所を認め合うことから

 

始まるといいます。

 

自分ができないことは、だれかが助けてくれる。だれかが困っている時は、自分が

 

率先して助けてあげる。

 

「お互いがお互いを必要としている関係性」が大事になります。

 

やるのが「当たり前」ではなく、やってくれて「有り難う」という関係性だと

 

いいます。

 

「有り難う」は有るのが難しいと書きますので、当たり前の対極にある存在と

 

いうわけです

 

 

私は職員研修で「喜びの貯金箱」というゲームを行います。この「喜びの貯金箱」

 

は、ある法人で行っていた研修プログラムですが、それをそのまま使わせてもらって

 

います。

 

お互いの長所、良い点を職員同士が紙に書いて、それを声に出して伝え合うのです。

 

そばで見ていると皆さん恥ずかしそうですが、とても喜んでいます。なかには泣いて

 

いる人もいます。

 

そして、決まって皆さん、職場でほめられたことはないのに、このように思ってくれ

 

いることが分かって励みになった、これからは期待に沿えるよう頑張りたいという

 

感想を書いてくれます。

 

このように職員と職員が人としてつながることで、初めて「助け合い」が生まれます。

 

利用者といくらつながっても、職員同士が人としてつながっていなければ、「助け合い」

 

は生まれてこないと思います。

 

 

つぎに3番目の「挑戦」ですが、これは前例や実績がないことでも、新しい意見を取り

 

入れてもらえるどうか、です。

 

「前例踏襲主義」や「手続き主義」は至る所で見かける光景ではないでしょうか。

 

そのような取組は前例がない、今のルールとは合わない、という理由で取り上げられない

 

ことも少なくないような気がします。

 

そうなると挑戦することが馬鹿らしくなり、「言われたことだけやっていれば良い」という

 

事になります。

 

指示待ち人間と揶揄されますが、一方でこのような職場環境が指示待ち人間を育成している

 

ともいえるのではないでしょうか。

 

最後の「新奇歓迎」は、ちょっと難しい感じがしますが、同質な価値観とは違うものも取り

 

入れる多様性と柔軟性があるかどうかというもののようです。

 

これからは、外国人介護士も増えていくものと思われます。当然、日本人の気質や考え方を

 

理解してもらわなければいけませんが、一方で外国人の多様な価値観も受け入れていく、

 

今流行りのダイバーシティということになるのではないかと思います。

 

 

さて、ここまで見てくると「心理的安全性」とは、何も真新しいものではないことに

 

気づきます。

 

日本には、「モラールサーベイ」というものがあって、職場への定着と労働生産性

 

を高めるという目的で、この手法が開発された歴史があります。

 

戦後の復興期に日本の産業を立て直すため、厚労省(旧労働省)が、官民一体と

 

なって、産業心理学や統計学を駆使して開発したRCS

 

Research Communication Satisfaction)といわれるものです。

 

私は、以前勤めていた富士通での経験から、このRCSを知っていましたので、これは

 

福祉介護の職場にも使えるのではないかと考えて、15年ほど前から実際に福祉介護

 

施設に導入し、試行錯誤を繰り返してきました。

 

具体的には、40項目の質問に答えて頂くことで、その職場の「話しやすさ」、

 

「助け合い」、「挑戦」の度合いが、ある程度大づかみに分かるのです。

 

実際には、「経営満足」「上司満足」「職場秩序」「労働条件」「職場生活満足」の5つの

 

カテゴリで診断結果が出るようになっています。

 

個人個人の結果はもとより、施設全体で集計したり、各ユニットで集計したり、同一フロア

 

での集計や、同職種で集計したり、様々な単位で集計することで、その施設職場を多角的に

 

分析することができます。

 

そして、その職場の問題点を一つ一つ潰していくことで、「心理的安全性」の高い職場に

 

していき、結果として、定着率と労働生産性が上がるというわけです。

 

ただし、「心理的安全性」の4つめの因子である、「新奇歓迎」はフォローしていません。

 

その当時、基本は日本人だけの組織を前提としていましたし、ダイバーシティなどの考え方

 

自体がなかったわけですから、当然といえば当然のことです。

 

しかしながら、この「新奇歓迎」がなくても、現状、「心理的安全性」を高めるには、十分

 

な内容だと考えています。

 

 

「温故知新」とは逆の流れですが、新しい理論を知って、却って古いものに既にその考え方

 

があったことを知るのは、「古典に学べ」という教訓にも通じるようで嬉しい体験でも

 

あります。

 

 

皆様も一度、モラールサーベイ(RCS)について研究されてみてはいかがでしょうか。

 

ご興味があれば、導入のお手伝いを致します。

 

また、弊社のオンラインセミナーでもご紹介したいと考えています。

 

今回は、「心理的安全性」」について書いてみました。

 

以上、皆様のご参考になれば、誠に幸いです。

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第45号は、3月10日頃に配信致します。

 

1.内容は、興味がもてますか?
2.疑問点、ご意見はありますか?
3.その他、感想、希望テーマ等

 

差し支えない範囲で、日々お考えになっていることをご意見くださると、

テーマ選定や内容を考える上での参考になりますので、お気軽にご返信

頂けますと幸いです。
※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しくお願い申し上げます。

 

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