組織市民行動ができる人を役職に登用する

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組織市民行動ができる人を役職に登用する

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2022/08/11 組織市民行動ができる人を役職に登用する

私は講演などでたびたび「専門職の延長線上に管理職は存在しない。」と

 

いう話をします。専門職として、利用者サービスのマインドとスキルを

 

いくら磨いても、その先に管理職としての姿はないということをこうした

 

言葉で表現しています。

 

すると、必ず一定数の方々は、その話に共感して下さいます。

 

 

福祉介護事業の場合、専門職集団ですので、主任や課長などの役職に登用

 

する場合、今まで専門職として働いてきた人を登用することになります。

 

 

管理職に登用する場合、往々にしてプレイヤーとして優秀な人、つまり

 

現場を上手く廻してくれる、誰よりも利用者サービスに長けている、

 

その人がいないと現場が回らないなどの、いわゆる現場仕事ができる人

 

を登用するケースが大半だと思います。

 

加えて、介護での経験年数や介護福祉士などの資格が加味されます。

 

要するに利用者サービスの現場仕事のベテランが管理職に登用されるケース

 

が圧倒的多数ではないでしょうか。

 

 

 

しかし、仕事ができる人、現場のベテランや資格者が、必ずしも組織を成長

 

させてくれるとは限りません。

 

大前提として、管理職に登用する場合、部下スタッフを巻き込んで組織を

 

成長させてくれる可能性のある人を登用すること、この認識がまず必要

 

ではないでしょうか。

 

 

それでは、組織の成長とは何を指すのでしょうか。

 

以下の3つに集約できるといわれています。

 

①収益性向上・・稼働率や売上収入、収支差額などの経営成果が上がること

 

②現場改善・・・会議の生産性や業務の効率化など今のスタッフで生産性が 

        上がること

 

③人材の定着・育成・・・離職しにくい職場風土になること、惜しみなく知

            識技術が共有されて、スタッフ育成が進むこと

 

 

その中でも特に③の人材の定着・育成が、今最も重要な課題ではないで

 

しょうか。

 

 

福祉介護業界は、他産業と比べると離職率が高いといわれています。

 

離職率が高くて、その穴埋めのために、人員確保に苦労している法人施設

 

は少なくありません。

 

また、国の人員基準よりはるかに多い職員を配置しているにも係わず、

 

職員が一人でも抜けると現場が廻らないと言って、補充を強く訴える

 

現場管理者など、他産業に比べて生産性が低いことも分かっています。

 

私は、これは、この業界の管理職登用のあり方に一つの原因があるの

 

ではないかと考えています。

 

 

現在私は、障碍者施設を3施設と特養1施設の計4施設を経営している

 

ある社会福祉法人の依頼で、課長職だけをメンバーとした、法人の中期

 

経営計画策定の仕事をしています。

 

中期経営計画の一環で人材ビジョンを作る際、各メンバーから管理職

 

としてふさわしい人材像をまとめてもらいました。

 

その結果を以下に列挙します。

 

①法人組織の成果重視・結果責任を負う

目的志向・組織志向     

手本になる優れた人間性      

肯定的な人間観

裏表がなく、公平公正

言行一致

声をかけやすい余裕のある態度

任せる力

芯の通ったリーダーシップ

利用者満足だけでない広い視野

 

これをみると、先に組織の成長で掲げた①収益性向上②現場改善③人材の

 

定着・育成と完全に符合しているように思います。

 

①法人組織の成果重視・結果責任を負うは、まさに収益性向上と符合して

 

いますし、②目的志向・組織志向は、現場改善であり、③~⑩までは、

 

人材の定着・育成に大きく関係すると思います。

 

結論として、ここに挙がったあるべき管理職像は、現場仕事を廻すだけの

 

業務のベテランとは、大きくかけ離れているのではないでしょうか。

 

すくなくともイコールではないと思います。

         

 

さらには、これらのあるべき管理職像をみると、職種や部署の現場仕事とは

 

何ら関係ないことが分かります。

 

このいくつかを兼ね備えた人材なら部署が変わっても、さらには職種が

 

変わったとしても、立派に管理職の務めを果たしていけるのではないか、

 

私はそのように感じます。

 

今いる主任や課長といった管理職を人事異動で動かそうとすると、その人

 

がいないと、現場が廻らないという話をよく聞きます。

 

これも現場を上手く廻すだけの人を管理職にしている弊害でしょう。

 

 

 

話は飛ぶようですが、皆様は「組織市民行動」という言葉をご存じで

 

しょうか。

 

「組織市民行動」とは、現場の介護業務や経理処理など職種ごとに割り当て

 

られた業務ではなく、また、人事考課の評価項目にも挙がっていないが、

 

組織の成長をもたらす行動であり、この行動の有無が業績や生産性、離職率

 

大きく影響することが分かっている行動のことを指します。

 

その「組織市民行動」の具体例を挙げますと

 

①直接の部下ではない人にも仕事を教える、育てる

 

②担当外のことでも「大丈夫?」と声をかけ、手伝う

 

③新たに入社した人が寂しい思いをしないように気遣う

 

④ムードメーカーとして、職場の雰囲気を明るくする

 

⑤マニュアルを作り、ノウハウを組織の資産として残す

 

⑥職場の一体感を醸成するような行事やイベントを企画する

 

などがあるとされています。

 

いずれも利用者サービスの現場だけを見ていては、これらの行動は生まれ

 

てこないでしょう。

 

 

ここでひとつ思い出す事例を紹介します。

 

ある社会福祉法人の女性の主任さんのお話です。

 

彼女は、現場仕事を上手く回すベテランですが、稼働率や離職率といった

 

組織の成長についても意識を高く持っています。

 

ある時、部下スタッフが体調が悪いと言って数日休んだことがありました。

 

彼女は、そのスタッフが一人暮らしだといことを知っていて、食事や買い

 

物などで困っていないかと気遣い、すかさそのスタッフが住んでいるアパ

 

ートを訪ねたといいます。

 

このような上司が、自分の上司だったらどれほど嬉しいでしょうか。

 

これが正に「組織市民行動」の一例でしょう。

 

 

 

私は、普段からこのような行動をとれる人を管理職に登用することが出来れ

 

ば、業績や生産性、離職率の改善に大きく貢献してくれることは間違いない

 

と考えています。

 

 

ただし、そこに行くには、まずは、業務のベテラン、利用者だけを見て、

 

現場仕事を上手く回すだけの専門職を役職に登用しないという決意が必要

 

なるでしょう。

 

そして、キャリアパスには、先に掲げた管理職としての人材像や、この

 

「組織市民行動ができる人」を管理職登用基準に掲げておく必要がある

 

のではないかと考えています。

 

そして、そのようにして選抜した管理職者には、登用前には、必ず管理職

 

研修を受講してもらうことも必要でしょう。

 

この研修で、管理職としてのマインドとスキルを身に着けて、今まで長く

 

携わっていた専門職から脱皮してもらうことが、介護福祉業界においては、

 

極めて重要であると考えています

 

今回は、「組織市民行動ができる人を役職に登用する」というテーマで書い

 

てみました。

 

 

以上、皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです。

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第51号は、9月10日頃に配信致します。

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