「経営ビジョンと人材ビジョン」

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「経営ビジョンと人材ビジョン」

メールマガジン

2019/02/12 「経営ビジョンと人材ビジョン」

こんにちは。

 

福祉マネジメントラボの大坪信喜です。

 

 

今月も皆様とのご縁に感謝しながらメルマガを配信致します。

 

今回のメルマガで第6号になります。

 

今回は「経営ビジョン」と「人材ビジョン」についてお伝え致します。

 

  • 経営ビジョンを考える

 

まずはじめに、福祉介護事業経営の捉え方、アプローチの仕方を見ていきます。

 

少々、教科書的な話になってしまいますが、日頃、講演で使っているフロー図を

 

使って解説します。 図1.福祉事業の経営フロー

 

図1では、経営理念から経営方針までを経営ビジョンと呼んでいます。

 

どこからどこまでが経営ビジョンかという明確な線引きはありませんので、

 

あまりこだわる必要はありませんが、一応私の解釈です。

 

経営理念は、今まで何度もお話しした通りですが、

 

経営戦略とはどのようなものでしょうか。

 

SWOT分析を使って経営戦略を考える

 

20年以上この業界でコンサルをしてきて思うことは、教科書に載ってる

 

ようなコンサルツールは現場では、ほぼ使えないということです。

 

本に書いてある新しい手法やツールをコンサル会社がこぞって導入

 

しますが、すぐに廃れます。

 

また、運用した経験がないので仕組みだけ入れて、そのまま活用も

 

されないまま、紙の資料だけが残されます。

 

一時期もてはやされていたBSC(バランススコアカード)なども

 

今ではほとんど聞かれなくなりました。

 

そんな中でも、数少ないですが、現場でも使えるツールにSWOT分析

 

があります。これは使ってみる価値があります。

 

SWOT分析に限らず、マトリックスで考えて現象を4つに分類する手法

 

は、課題を明確化するのに役立ちます。

 

 

表1に事例を載せました。これに倣って一度、自社のSWOT分析に取り

 

組まれるといいと思います。表1.SWOT分析

 

そうすると、頭の中で考えている自分たちの組織の「強み」と「弱み」、

 

現在の経営環境がもたらす「機会」と「脅威」が浮き彫りになってきます。

 

「弱み」からは、自社の経営課題が浮かび上がってきます。

 

「脅威」に対して、自分たちの「強み」をどう生かしていくかが、

 

将来構想のヒントになります。

 

「機会」すなわちチャンスがあれば、そこに向かっての事業展開や

 

人材確保策を考えることができます。

 

この事例で考えますと「強み」として内部留保が5億円あります。

 

一方で「弱み」として、人材確保が場当たり的という課題があります。

 

内部留保を使って、人材確保のための部署を、先行投資的に立ち上げる

 

ことは考えられないでしょうか。

 

たとえば内部留保の20%に当たる1億円を使って「人材対策室」を

 

設置するのです。

 

そして、専任の要員を配置して、近くにできる福祉系4年生大学と

 

のパイプを作り、その学校から安定的に人材が確保できるような仕組み

 

を作っていく。「人材対策室」を充実させていくことで、近くにできる

 

4年生大学だけでなく、近隣の県や就職先が少ない地方にも学校訪問して

 

恒常的な人材供給のパイプ作りができるかもしれません。

 

また、学生に訴えかけるようなホームページに内容を更新して、ネット上

 

での求職者数を増やすことも考えられます。

 

さらには、稼働率が低くて、収入が増えない原因は、認知度を高めるため

 

の営業力の弱さが考えられます。

 

ここでも内部留保を使って、営業担当のスタッフを、専任で配置してみる

 

のも方法かもしれません。

 

職員配置数が基準より多い「強み」を活かして、営業センスのあるスタッフ

 

を営業職へ職種転換することも考えられるかもしれません。

 

このように「強み」を活かして「弱み」を克服していく、様々な構想を練る

 

ことを経営戦略といいます。

 

 

いずれにしても、何となく頭の中にあることを、このSWOT分析の表に

 

落し込んでみると経営についての将来構想が浮き彫りになると思います。

 

一度、このような取組みを行なって、経営戦略を構築できれば、その手法

 

を定期的に繰り返すことで、経営環境の変化にも適応できるようになるの

 

ではないかと思います。

 

  • 人材ビジョンを考える

先ほどのSWOT分析の事例では、人材確保が場当たり的という「弱み」

 

がありました。退職者が出てから、慌てて求人募集するという流れに

 

なっているとしたら、取りあえず欠員を埋めるために、派遣会社から

 

の紹介に頼ってしまうということにもなりかねません。その結果が、

 

派遣社員が増えてきたという弱みにつながっているかもしれません。

 

管理職が育たないという弱みも、場当たり的な採用が、結果的に

 

管理職に適性のない人材が集まっている理由かもしれません。

 

そのような流れは、どこがで断ち切らなければならないのでは

 

ないでしょうか。

 

それには、将来に渡って、自社を支えてくれる人材ビジョンを

 

考えて、それに合致する人材を一人でも増やしていかなくては

 

ならないでしょう。

 

男女比や年齢構成、現場スタッフと経営スタッフの人的バランス

 

といった構造自体も見直さなければならないかもしれません。

 

人材ビジョンとは、経営ビジョン実現のために、どのような人材が

 

どれくらい必要になるかを示した、中長期の人材構想です。

 

具体的には、人員計画、人件費計画、人材の組織配置イメージ、

 

キャリアパスを含めた育成計画を明確にしていくことだと考え

 

られます。

 

経営を持続していくためには、ビジネスリーダーも必要になる

 

でしょう。マネジャー層も一定程度必要です。

 

日々の、現場を回すだけの職種を揃えてみても経営は持続でき

 

ません。こうした前提で、人材ビジョンを考えてみたいと思います。

 

 

・新卒採用か職種限定の中途採用か

 

色がついてなくて、様々な可能性や拡がりが期待できる新卒採用か、

 

職種限定の中途採用かの問題があります。

 

業界で広く行なわれている人材募集は、職種限定の中途採用では

 

ないかと思います。経験者、未経験者関係なく、介護職等の職種

 

限定で中途採用するケースが圧倒的のように感じます。

 

たとえ事務職であっても、将来、ビジネスリーダーとして活躍して

 

くれそうな人材やマネジメント機能が果たせるような人材という点

 

にフォーカスして採用しているケースは少ないように思います。

 

単なる事務経験者で、左にある数字を右に転記するだけの事務仕事

 

が得意だというだけでは、ビジネスリーダーや管理職としては機能

 

しないのではないか。

 

そのような採用を続けていることが、先ほどのSWOT分析の「弱み」

 

にあったような管理職を担える人材が育たないということにつながって

 

しまっていないかということです。

 

また、自社で管理職が育たないと言う理由で、外から企業の管理職経験者

 

や他施設で管理職だった人を安易に採用して、これまた機能しないという

 

ことも散見されます。

 

私は、法人企業の経営継続のためには、新卒や第二新卒のあまり色が

 

ついていない、伸びしろのある人を広く求めて、採用していく必要が

 

あるのではないかと考えています。

 

そして、経営理念を体現できるような、生え抜きの社員を育成していき、

 

将来、経営や組織を担える人材に育てていくのが王道ではないか。

 

そのように考えますと、果たして、職種限定の中途採用者だけで

 

経営が持続していけるのか。

 

派遣会社に1人紹介してもらうのに6~70万円掛けても、

 

すぐに辞めてしまうという話を最近、よく聞くようになりました。

 

違う考えの読者もおられるでしょうが、私は、新卒や第二新卒をある程度

 

採用して、従業員全体の割合を徐々に生え抜きの従業員で占めていくよう

 

にする必要があるのではないかと考えています。

 

新卒者は、簡単には辞めません。いろんな色に染まっていないので、

 

帰属意識も根付かせやすいという利点があります。

 

また、他社を知りませんので、前職と比較して「ああだ。こうだ。」

 

というネガティブな発言もしません。

 

帰属意識があれば、この会社で役に立とうという意識も芽生えさせ

 

易くなります。

 

介護がやりたいだけで、別にこの会社じゃなくてもいいと考えている

 

人材とは明らかに違います。

 

新卒や第二新卒を増やしていき、帰属意識のある従業員を増やしていく

 

方が、結果的に生産性は上がるのではないか。

 

また、そのようにしている法人企業に多くの成功事例をみることができます。

 

ある介護事業所の調査では、中途採用者は新卒の約2倍の離職率という結果

 

があります。同じ程度のコストを掛けて離職率が2倍なら、長い目でみると

 

新卒採用の方が生産性は2倍になります。

 

労働集約型産業の生産性向上において、一番重要な要素である、価値観や

 

考え方のベクトルも合わせやすくなります。

 

以上、何かのご参考になれば誠に幸いです。

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、本当に有難うございました。

 

次の第7号は来年110日頃に配信致します。

皆様、良いお年をお迎え下さいませ。

 

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