福祉介護事業のリスク要因PART2

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福祉介護事業のリスク要因PART2

メールマガジン

2023/09/09 福祉介護事業のリスク要因PART2

今年5月に配信しましたメルマガ59号の続編です。

 

この59号では、福祉介護事業のリスク要因ということで、光熱水費の高騰、

 

人材紹介費用の高騰、給食をはじめとした外部委託費用の高騰をテーマに

 

話を展開しましたが、このメルマガの内容を受けて富山県にある社会福祉

 

法人の理事長様から自法人で行っている取組について貴重なお便りを頂き

 

ました。

 

本メルマガ読者の皆様にも、きっとご参考になる点があると考え件の

 

理事長様に掲載のお許しを頂きましたので、以下にそのほぼ全文を掲載

 

致します。

 

 

 

『2023年5月11日の大坪先生のメルマガで、「福祉介護事業のリスク要因」

 

と題して、コスト面に焦点を当て、水光熱費や人件費、外部委託費について

 

ご示唆いただき、ごもっともと思いながら拝読させていただきました。

 

しかし、紙面上の文字数の関係からかもしれませんが、収益増加策について

 

の言及がありませんでしたので、ずっと違和感を覚えながら今日に至り、時

 

期をみて今後のメルマガ等で皆さまにご教示いただきたいと思った次第で

 

す。

 

高齢分野で介護保険制度にかかる事業を展開する法人は、収入が国によって

 

定められる「公定価格」のため、3年ごとの介護報酬改定の時期まで、いかん

 

ともしがたいという話をよく耳にし、また、その通りの一面もあることも事

 

実だと思います。

 

福祉事業経営者の多くは、介護保険制度に「依存した」あるいは「護られ

 

た」経営スタイルが染み込み過ぎているという側面もあるのではないでしょ

 

うか。

 

民間の一般企業では、経営者が最も頭を悩ませる「値決め」に向き合う姿勢

 

が求められ、顧客が納得し、会社にも利益をもたらし、存続していける方法

 

を模索していると思います。自社の商品やサービスの価格設定について、難

 

しさや自信と覚悟をもって対処していると共に、外部環境の変化に対する適

 

応能力を備えた企業のみが生き残っているのではないでしょうか。

 

介護保険制度においても、食費や居住費等については、利用者の全員が対象

 

となる訳ではありませんが、一定所得以上の利用者に対してはそれぞれの事

 

業所で「覚悟」をもって価格設定できることになっています。

 

当法人では、昨春のウクライナ情勢に端を発して、世の中で燃料費や食材等

 

の物価高騰・値上げの機運が高まったときに、いち早く、食費と居室利用料

 

の改定をさせていただき、半期7百万円の増収を実現し、令和4年度決算では

 

収益の下支えとなりました。

 

料金改定検討に際して、近隣のサ高住、有料老人ホーム、民間事業者の食費

 

や居室料を調査し、それらに対し若干低め(値ごろ)の改定価格といたしま

 

した。

 

利用者(家族)及び職員には、当法人で提供しているサービスの水準は他事

 

業所に比べて、決して劣ることはなく、むしろ、提供に対して異常に低価格

 

であったものであり、「適正な価格」を頂戴するための見直しですと説明

 

し、反対意見等は今日にいたってもありませんでした。

 

制度ビジネスを行っている事業者においても、自ら考え、自らの力で未来を

 

切り開いていく能力が必要になってくるということを、読者の皆さまにもお

 

伝えしていただければと思います。

 

失礼なことも申し上げましたかもしれませんが、ご容赦くださいませ。』

 

以上

 

ちなみにこの理事長が経営されている社会福祉法人は、今年の8月24日、

 

「介護職員の働きやすい職場環境づくり」の好事例として、内閣総理大臣賞

 

を受賞されました。

20230823_hyosyo.pdf (mhlw.go.jp)

 

 

私も日頃から介護保険制度や障害者総合支援といった国の制度に則るだけ

 

では経営はできないと講演などの機会を通じて皆様に訴えさせて頂いており

 

ますが、今回のお便りは、正にそれを実践された好事例だと思います。

 

介護保険等の国の制度は、われわれにとって非常に大きな存在ではあります

 

が、ただし経営を持続する上では、あくまでも一環境に過ぎません。

 

光熱水費等の物価高騰という環境に如何に適応していくのか、エネルギー高

 

騰に対する国の助成金に頼るだけでなく、今回ご提示頂いたような自助努力

 

も、この業界の経営者に求められているのではないでしょうか。

 

 

それでは、自法人・事業所で食費や室料を見直す場合、どのようなアプロー

 

チが必要か。一つの考え方として、私の経験を通したお話をしてみたいと思

 

います。

 

まず、食費の利用者負担額について、厚労省では、特養や老健などの食事の

 

提供に要する費用の基準額は、利用者1人1日(3食)当り1,445円とされ

 

ていますが、補足給付の対象ではない方、つまり所得段階が第4階の比較的

 

所得が高い方は、施設と利用者の契約で自由に決めて良いとされています。

 

1,445円の基準額の内訳ですが、その6割が食材費、残りの4割が調理員の

 

人件費といわれていますので、食材費は1,445円×0.6=867円、調理員の人

 

件費が1,445円×0.4=578円になります。

 

仮に食費負担額を見直す場合、自施設が食材費として実際いくら使っている

 

かを知る必要があります。

 

これは、決算書の給食費÷年間利用者延べ人数で算出することができます。

 

この計算式で得られた結果が、仮に900円だとしたら900円-867円=33円

 

の持ち出しをしていることになります。そうすると、33円の値上げをしても

 

差し支えないということになります。

 

この33円の値上げで物価高騰分のいくばくかを吸収することができます。

 

 

また、現在あるデイサービスに管理会計を導入して、利用者1日当りの給食

 

コストを算出しています。このデイサービスの場合、食材費が398円掛かっ

 

ていることが分かりました。そして、利用者に負担してもらっている食費代

 

が現在、550円です。550円の6割が食材費と考えますと330円になりま

 

す。実際の食材費398円と比較すると68円の差があり、その分が持ち出しと

 

いうことになります。

 

そこでこのデイサービスでは、来年4月の介護報酬改定に合わせて、令和6年

 

4月1日からは、食事代を70円値上げして620円とする方向で調整していると

 

ろです。

 

その際、先の理事長の文面にもあるように、近隣のデイサービスの食事代も

 

調査したうえで、十分競争力がある金額だという検証も行いました。

 

 

つぎに、室料についての考え方をみて行きたいと思います。

 

厚労省では、ユニット型の特養の室料の基準額が設定されていますが、建設

 

時、豪華な施設を建てた場合、基準額では賄いきれない施設も多数存在しま

 

す。

 

この室料については、比較的多くの施設が基準費用額に縛られない価格設定

 

をされているように思いますが、実際どのような根拠で算定すれば良い

 

しょうか。

 

個室ユニットの特養などの場合、部屋代だけではなく、その部屋で使う光熱

 

水費も室料に含まれます。

 

部屋代は減価償却費÷利用者延べ人数である程度算出することができます。

 

それに加えて、決算書の光熱水費÷利用者延べ人数がその部屋の1日当りの

 

光熱費代になります。

 

こうして計算した部屋代と光熱費代を足したものが1日当りの室料という風

 

に考えることができます。

 

 

現在、自施設で設定している室料が上の方法で計算した室料より安いようで

 

あれば、室料値上げを検討しても宜しいかと思います。

 

 

今回は、読者から頂いたご意見を元に「福祉介護事業のリスク要因PART2」

 

ということで書いてみました。

 

以上、皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第64号は、10月10日頃に配信致します。

1.内容は、興味がもてますか?
2.疑問点、ご意見はありますか?
3.その他、感想、希望テーマ等

 

差し支えない範囲で、日々お考えになっていることをご意見

くださると、テーマ選定や内容を考える上での参考になりま

すので、お気軽にご返信頂けますと幸いです。

※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しく

お願い申し上げます。

 

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