中小企業白書を読んで-PART2-

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中小企業白書を読んで-PART2-

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2024/06/12 中小企業白書を読んで-PART2-

先月に引き続き、2024年中小企業白書(中小企業庁)を読んで、

 

感じたことを書いてみたいと思います。ご興味のある方は、

 

お付き合いください。

 

前号取り上げた白書によると、業種関係なく、中小企業の経営課題

 

は「売上不振ほか、原材料高求人難の割合が高い状況」である

 

とのことだが、一方で求人難の中でも人材を十分に確保できている

 

企業では、「働きやすい職場環境・制度の整備が進んでいる」とい

 

う分析結果が示されていました。

 

それを受けて、われわれ福祉介護業界と照らし合わせながら、

 

働きやすい職場環境作り」について考えた訳ですが、今回、

 

さらに白書を読み進めますと、人材育成の機会を増やことが

 

労働生産性の向上につながるとの見解が述べられています。

 

従業員研修の実施といった人材育成の機会を増やした企業群では、

 

5年前と比べて生産性がプラスになっているが、従前と変わらず、

 

研修などの人材育成の機会を増やさなかった企業群では、生産性

 

が5年前と比べるとマイナスになっているとの分析結果です。

 

職員研修など費用が出て行くものに対して、単年度の経営状況が

 

悪化しないように、何も今やる必要はないと考えて、人材育成

 

にお金を掛けないという法人企業をしばしば目にしますが、こう

 

した経営判断、つまり人材育成にお金を掛けないことが、逆に

 

生産性を低下させて、経営状況の悪化を来しているのではないか

 

白書では、そのように指摘しているように感じます。

 

 

コンサルの仕事をしていますと、経営を人件費率だけで考えている

 

経営層を見かけますが、これは危険な思想ではないかと思います。

 

経営分析の観点で言いますと、人件費率には、研修費や福利厚生費

 

も含みます。人件費率だけを削減することに着目し、他の経費、特

 

に外部へ出て行業務委託費などに着目しない、労働生産性の観点

 

のない経営は、経営は言えず、運営ではないだろうか。私はその

 

ように考えています。

 

そもそも労働生産性とは、従業員が1人当りくらの金額を稼ぎ出

 

したかという指標ですので、無駄な電気水道の使い方や放漫な食材

 

管理、あるいは、在庫管理なき無駄な発注などが、従業員1人当り

 

の稼ぎの少なさとなって数字に表れます。

 

また、稼働率を上げることも現場の大事な仕事だと理解し、そうし

 

た行動が生まれれば、従業員1人当りの稼ぎは確実に増えます

 

ここが職員研修が必要になる理由だと思いますが、人件費率だけ

 

経営を考えているとこの観点がすこーんと抜け落ちてしまいます。

 

先の白書の指摘である、人材育成の機会を増やした法人企業群では、

 

生産性がプラスに転じたとあるのは、福祉介護事業に置き換えて考え

 

ると研修を通して、電気水道の使い方の見直しや、放漫な食材管理の

 

無駄の見直しおむつや保健衛生品の在庫管理を行う必要性に気付く

 

ことであったり、あるいは、現場が稼働率という数字を意識するよう

 

になることが、労働生産性の向上を招くことになるのではないでしょ

 

うか。

 

さらに白書では、企業規模別の労働生産性の額についても言及してい

 

ます。

 

従業員10名未満の小規模事業者の労働生産性は、年間168万円。

 

大企業までには達していない中小規模の企業が、315万円。

 

そして、大企業が605万円という結果です。

 

大企業と中規模企業の差は2倍近くありますが、大企業には、資本

 

大きさやスケールメリットといったものがありますので、当然と

 

えば当然ですが、経験上、同じ定員の特養やデイサービスであって

 

も労働生産性においてこの位格差はざらにあります。

 

稼働率が高く、職員配置が適正な所では、600万円を優に超えます。

 

一方で、稼働率が低く、職員配置が厚い、例えば、利用者10人当り

 

職員数が10名というような所は、300万円台です。

 

当然、前者の人件費率は60%台で、後者は80%台という感じですが

 

職員研修や福利厚生に使っている金額は、前者の方が圧倒的に多い場合

 

がほとんどです。これが経営というものではないでしょうか。

 

また、白書では、省力化投資についても触れています。

 

省力化に向けた設備投資は、人材不足の対応策としては有効であるが、

 

規模の小さな企業ほど省力化が進んでいないという実態があるようです。

 

福祉介護業界でも見守りセンサーやノーリフティングなどの省力化機器

 

導入が進んでいますが、こうした機器の導入が必ずしも省力化につな

 

がっていないという現実も垣間見られます。これには、厚労省の人員基

 

準が大きな足かせになっていますが、一方、現場でも機器の導入目的が

 

省力化であることが理解されておらず、機器の導入によって削減された

 

時間を職員配置の削減や職員の有給取得増に充てるのではなく、利用者

 

に係わる時間を増やすのに使っているという実態があります。

 

これでは、折角、多額の費用を使って設備投資したとしても労働生産性

 

は上がらないでしょう。介護現場に機器を導入する目的は、職員配置を

 

削減する、つまり省力化する事だという認識をもっと深める必要がある

 

のではないでしょうか。

 

最後は、中小企業の成長投資についての提言です。白書では、人への投

 

資のほか設備投資、M&A、研究開発投資といった投資行動が成長に有効

 

との見解が示されています。設備投資については、省力化機器の導入の

 

ところで述べましたが、研究発投資とは、われわれ福祉介護事業の場合

 

正に人への投資を意味するものだと思います

 

人つまり従業員に投資しない対人サービス業は、今後生き残れないのでは

 

ないか。私はそのように感じています。

 

M&Aについては、現在、大手介護事業者の吸収合併が活発に行われ

 

ていますが、社会福祉法人の業界でも、M&A(吸収合併)が増えて

 

来ているようです。私の知り合いの理事長も最近、吸収合併を終え

 

たばかりのようですが、なかなかご苦労もあったと聞いています。

 

過去、病院が医療保険制度に移行した後、吸収合併が盛んに行われ

 

歴史があります。医療法人と社会福祉法人では、成り立ちも取り

 

巻く法律制度も違いますが、措置制度から保険制度に変わった現在、

 

社会福祉法人の世界でも、これからM&A増えていくだろうこと

 

は容易に想像できます。

 

以上、前回に引き続き、中小企業白書を紐解きながら書いてみました。

 

皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第73号は、7月10日頃に配信致します。

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