福祉介護職員の本当の離職理由

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福祉介護職員の本当の離職理由

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2021/05/10 福祉介護職員の本当の離職理由


《今月のテーマ》

 

 

         本当の離職理由を知る

 


私は、岡山県社会福祉協議会に設置されている経営支援委員会の

 

委員をしています。

 

今年4月、その委員会から「社会福祉法人の人材確保・定着

 

関する調査報告」が発刊されました。

 

社会福祉経営に関する調査・研究|地域福祉について|岡山県社会福祉協議会 (fukushiokayama.or.jp)

 

ご承知の通り、社会福祉法人・施設では、その多くが人手不足で

 

困っていて、仕方なく、人材派遣紹介会社に頼って、人員基準

 

満たしている施設も少なくありません。

 

こうした背景から、この委員会では、県内の社会福祉法人に調査

 

送り、離職の実態や紹介派遣会社の利用状況、定着を促進する

 

に取組んでいることなどについて、アンケート調査を行ない、

 

その結果を取りまとめました

 

岡山県内には、現在366の社会福祉法人がありますが、有効回答

 

163件(44.5%)でした。

 

 

調査票を作成するにあたって、本当の離職理由が知りたいという

 

意見もありましたので、「前職も介護福祉事業所に勤めていて、

 

その施設・事業所を辞めた理由」を設問に入れました

 

結果、100法人から回答が寄せられ、合計196の離職理由

 

集まりました。

 

有効回答163件のうち、100法人ということは、6割強の法人

 

が、前職も福祉介護施設で働いていた職員を受入れていることになり

 

ます。改めて、業界内で職員が流動している割合の高さを再認識する

 

結果となりました。

 

 

さて、前職の福祉介護事業所を辞めた理由で一番多かったのは、

 

やはり「職場の人間関係」という結果でした。

 

介護労働安定センターの全国調査でも、「職場の人間関係」が

 

トップで、過去10年間を振り返っても3位以内に入っています。

 

今回の岡山県の実態調査でも、同じ結果が出たわけです。

 

そして、2番目に多かった理由は、結婚・出産・育児・夫の転勤や

 

離婚による引越しといった「家庭の事情」によるものでした

 

これも介護労働安定センターの直近の実態調査結果と同じです。

 

そして3番目は、法人の方針や上司のあり方などの職場環境の問題、

 

いわゆる「法人の方針や運営のあり方」でした

 

これも介護労働安定センターの実態調査結果と同様です。

 

一方、巷でよく言われている「賃金が(収入)が少ない」は9件で

 

した。196件中9件ですので、わずか4.6%に過ぎません。

 

それ以外で、目立ったものとしては、通勤が不便や通勤が困難という

 

理由が10件ありました。

 

また、事業所の倒産や閉鎖なども増えているようで、6件がこの理由

 

による離職でした。

 

以前は、こうした理由はほとんどなかったよう思いますので、福祉介護

 

事業所も本格的に淘汰が始まっているようです。

 

 

今回、特に注目したいのは、一番多かった「職場の人間関係」です。

 

アンケートの生の声を一つ一つみると、給料より職場の人間関係の問題

 

の深刻さが見てとれます。

 

20年以上、福祉施設のコンサルをやってきて感じることは、職場の

 

人間関係の悪さが離職につながるということが、果たして十分に認識

 

されているかという問題です

 

「利用者が笑顔になれば、職員も幸せになれる」といった話しが、未だ

 

多くの経営者、施設長から聞かれます。

 

そして、「職員が退職するのは、賃金が安いから。だから介護報酬や

 

支援費報酬、保育所運営費を上げる必要がある。」という思考で停滞

 

している感があります。

 

しかし、そこで勤続するかどうかは、先のアンケート調査結果からも

 

分かるとおり、賃金以外の精神的報酬が大きく係わっています。

 

この点が理解されなければ、離職率は下がっていかないのではないか。

 

「利用者満足と従業員満足は別である」という意識転換(認識)の

 

必要があると思います

 

 

職員が辞めると言って、理事長、施設長に話しが上がってくる時には、

 

既に本当の離職理由は見えなくなっています。結婚や一身上の都合では、

 

どこに手を打てば良いか分かりません。

 

今回は、前職を辞めた理由ですから、かなり本音を引き出せたので

 

はないかと思っています。

 

職場の人間関係を良好に保つためには、現場リーダーの育成と組織の

 

一体感の醸成が不可欠です。

 

 

専門職研修だけに明け暮れず、組織の一体感を醸成するような研修を

 

法人内部で繰り返すことが、極めて重要であるという認識が、もっと

 

、もっと拡がることを願っています。

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第36号は6月10日頃に配信致します。

以上、
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※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しくお願い申し上げます。

 

 

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