福祉介護事業のリスク要因

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福祉介護事業のリスク要因

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2023/05/11 福祉介護事業のリスク要因

皆様もすでにご承知の通り、現在の福祉介護施設のリスク要因は、電気、

 

ガス、水道等の光熱水費および人材紹介派遣費、業務委託費、これら3つ

 

の費用高騰ではないでしょうか。

 

色々なものが知らない内に値上がりするなか、われわれ福祉介護事業コス

 

トを価格に転嫁することができず、最終的に利益率の減少や赤字転落とな

 

って表面化します。

 

令和4年度決算では、今まで収支トントンや2~3%程度の黒字だった施設

 

事業所が軒並み赤字決算になるのではないかと危惧されます。

 

ウクライナ戦争の影響などからエネルギー調達が困難になり、電力会社や

 

ガス会社は軒並み市場連動型の価格設定になってしまった結果、電力供給

 

自由化の恩恵はなくなりました。

 

特養や障害者施設などの生活施設では、従来は収入の3%程度が水光熱費

 

の占める割合でしたが、最近では4~5%まで比重が増えています。

 

100名定員の特養では年間収入が約5億円ですが、以前でしたら水光熱費

 

は1500万円前後で収まっていたものが、令和4年度は2000~2500万円

 

まで増大しています。

 

国からのエネルギー高騰に対する助成金はありますが、高騰分の半額程度

 

しか相殺することができない実態かと思います。

 

経営努力として残された道は、現場での電気水道、ガスの使い方を減らす

 

くらいしかありません。

 

福祉介護事業が労働集約型産業であると同時に設備産業であることに改めて

 

気づかされます。オール電化の施設などは大きな痛手でしょう。

 

一方で、労働集約型産業のデメリットが如実に表れてきているのが、人材

 

紹介派遣費用の高騰でしょう。少し前までは職員紹介一人につき100万円

 

したが、最近では120~130万円が相場のようです。

 

紹介派遣を全く使っていない法人も2割程度ありますが、逆に8割の法人

 

では、何かしら紹介派遣のお世話になっているというのが現状のようです。

 

特に離職率が高い施設・事業所では恒常的に紹介派遣を使っているように

 

思います。

 

130万円出しても長く勤めてくれれば、それなりの費用対効果はあります

 

が、実際にはあまり良い話は聞こえてきません。

 

法人施設に何のノウハウも残らない紹介派遣に一人当たり130万円も使う

 

なら、管理職育成に費用を掛けて、風通しの良い職場作りを実現する方向

 

舵を切ったり、組織構築や人事管理に長けた人材をヘッドハンティング

 

したりすることで長期的に離職の少ない職場に変えていく方が、投資とし

 

ては、ずっと価値があるように感じます。

 

そして、3つ目のリスク要因が外部委託の費用高騰です。

 

私のクライアント法人でも給食業務を外部委託しているケースが多いという

 

実態があります。そして、毎年のように管理費の値上げ要請が来て、しぶし

 

ぶながら従っています

 

以前は、収入に対する給食外部委託費率は8%程度でしたが、最近は10%

 

程度まで高騰している施設事業所も見かけるようになりました。

 

電気やガスといったエネルギー高騰は、近い将来止まると思いますが、

 

人材紹介派遣と外部委託費用は今後も上がり続けるのではないでしょうか。

 

 

私の感覚では、8割方の入所施設が給食を外部委託しているように感じま

 

す。また、介護保険制度が導入された2000年以降に開設された施設は、

 

そのほとんどが給食を外部委託しているのではないかと思います。

 

かなり以前から、給食を内製化している施設と外部委託している施設を

 

比較分析していますが、給食を内製化している施設の方が圧倒的に生産性

 

が高く、利益が出易いことが分かっています。

 

その要因の一つが管理委託費の構造にあります。添付している表をご覧に

 

なるとお分かりのように、給食業者の委託費構造

 

 

委託費には調理員の人件費だけではなく、⑧業務連絡費や⑨厨房用消耗品費

 

⑩献立作成料まで入っています。特に⑩献立作成料は施設自体に栄養士を配

 

置しているわけですから、ある意味ダブルで費用が出ていっているわけで

 

す。くわえて、これらの管理費に対して、給食会社の利益10%が上乗せさ

 

れ、さらには総額に対して消費税10%が加算されます。結果、本来は法人

 

施設に残るきお金が部の給食会社に流れていくわけです。

 

さらには、食材費の利ザヤで儲ける仕組みになっていますので、利用者から

 

もらっている食材費代より安い食材が使われて、利用者サービスの質も落ち

 

しまう危険性を秘めています。

 

そもそも介護保険制度以前は、福祉介護施設は自前給食が前提でしたが、

 

社会福祉基礎構造改革での規制緩和で給食の外注化が進んでいったという

 

経緯があります。

 

その当時、病院では給食業務は外部委託が一般的でしたので、それに倣う

 

形と調理員の労務管理の煩雑さを嫌って、福祉介護施設にも外部委託が拡

 

がって行きました

 

病院での患者さんの入院単価は1日当り約4万円。一方、福祉介護施設は

 

利用者1日当り1万円~1.5万円程度です。その差4倍の開きがあります。

 

ですから、病院では給食外部委託のコスト増はあまり問題になりませんが、

 

4分の1の収入規模の福祉介護施設では、大きな影響を受けます

 

こうしたことから、私は給食の内製化に向けて舵を切ることが必要な時期に

 

来ているのではないかと考えています。

 

 

今回は、「福祉介護事業のリスク要因」について書いてみました。

 

以上、皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第60号は、6月10日頃に配信致します。

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すので、お気軽にご返信頂けますと幸いです。

※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しく

お願い申し上げます。

 

 

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