046-890-0856
〒238-0021 神奈川県横須賀市富士見町3-77
小善は大悪に似たり
「小善は大悪に似たり」
この言葉は仏教の言葉と言われていますが、得度して僧侶でもあった京セラ
創業者の稲盛和夫師が大事にされていた言葉、考え方としても知られていま
す。
稲盛さんがJAL(日本航空)の再生に乗り出された時、経営理念や行動規範
がなかったJALに経営理念や行動規範という概念を持ち込み、それをJALフィ
ロソフィーとしてまとめ上げられました。そのJALフィロソフィーの中にも
この言葉を見ることができます。
稲盛さんは、自身のオフィシャルサイトで以下のように語っておられます。
「上司と部下の関係でも、信念もなく部下に迎合する上司は、一見愛情深い
ように見えますが、結果として部下をダメにしていきます。これを小善とい
います。「小善は大悪に似たり」と言われますが、表面的な愛情は相手を不
幸にします。逆に信念をもって厳しく指導する上司は、けむたいかもしれま
せんが、長い目で見れば部下を大きく成長させることになります。これが大
善です。
真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極め
ることなのです。」
今の日本では「パワハラ」ということが盛んに言われて、部下を厳しく指導
することが難しくなっています。
こうした風潮の中、読者の皆様も経営者、施設長といったお立場で職員指導
には、日々ご苦労されているのではないでしょうか。
30年前、パワハラという言葉もなかった頃の経験で私も深く考えさせら
れた出来事があります。
それは、私が富士通から転職してきて初めて福祉施設で勤めていた時のこと
です。その当時も今も一部の福祉施設では、現場のスタッフは走り回って忙
しいのに、事務所にいる施設長や事務員は座ってばかりで暇にしているのだ
から、少しは現場を手伝ったらどうかという意見がよく聞かれます。
ご多聞に漏れず、私が転職してきたその施設でも施設長が朝夕の送迎を自ら
行い、それ以外の時間も現場にいるような状態でした。
先の稲盛氏の言葉を借りれば、現場の声に負けて、「信念もなく部下に迎合
する上司」のように私には映りました。
こうした信念のない態度行動が、小善であり、ゆくゆくは大悪となって組織
をダメにするのではないか。
「嫌われたくない、良い施設長と思われたい」という信念のなさが組織にと
っては大悪につながるのではないか。
その当時、私はこの言葉は知りませんでしたが、今思うとこの違和感だった
のだと思います。
「人の振り見て我が振り直せ」ではありませんが、私自身この施設長の行動
を見ながら、深く自戒した記憶があります。
部下を持つ立場の人間は、「嫌われる勇気」が必要ではないでしょうか。
それは理事長や施設長ばかりではなく、現場の課長、係長、主任、副主任、
あるいは先輩の立場にある人間に等しく求められることではないか。
施設で組織上の問題を引き起こしている多くの場合、ここに問題があるよう
に私は感じています。
実は、「小善は大悪に似たり」には続きがあります。
それは「大善は非情に似たり」です。
一見、非情に見えることが結局は大善につながるという意味だと思います。
実際、理事長や施設長、あるいは現場の役職者が「嫌われる勇気」を持って
職員スタッフに接している福祉施設では、職場の不公平感はずっと少ないよ
うに感じています。
私のクライアントのある社会福祉法人では、職員を巻き込んだプロジェクト
活動で「ミッション・ビジョン・バリュー」を策定しました。
今年の4月から半年のプロジェクトでほぼ固まりました。
ご承知の通り、ミッションとは経営理念。ビジョンとは将来のありたい姿。
バリューは価値基準です。
ミッションとビジョンは、法人組織の外に向けた発信であり、バリューは、
組織の内側、つまりそこで働く全職員に向けた発信だと言われます。
この法人の「ミッション・ビジョン・バリュー」は、来年早々、職員に向け
て発信する予定ですので、ここではその詳しい内容について触れることは
できませんが、このバリューである価値基準が「大善」ということになるの
だと考えています。
この「大善」を役職者が「嫌われる勇気」を持って浸透させ、職員みんなが
実践してくれるようになったら、きっと素晴らしい施設になるのではないか
と、その施設の施設長と共に大きな期待を寄せています。
何でも「パワハラ」で済ましてしまう今の日本の現状に対して、大きな危機
感を感じますが、愛情をもって大善に向かう勇気こそが、今、この日本の全
てのリーダー層に求められていることではないでしょうか。
今回は、「小善は大悪に似たり」というテーマで書いてみました。
以上、皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです。
お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。
次の第66号は、12月10日頃に配信致します。
1.内容は、興味がもてますか? 2.疑問点、ご意見はありますか? 3.その他、感想、希望テーマ等
差し支えない範囲で、日々お考えになっていることをご意見
くださると、テーマ選定や内容を考える上での参考になりま
すので、お気軽にご返信頂けますと幸いです。
※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しく
お願い申し上げます。
福祉マネジメントラボ
電話番号 046-890-0856 住所 〒238-0021 神奈川県横須賀市富士見町3-77
24/10/13
24/09/27
24/09/10
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「小善は大悪に似たり」
この言葉は仏教の言葉と言われていますが、得度して僧侶でもあった京セラ
創業者の稲盛和夫師が大事にされていた言葉、考え方としても知られていま
す。
稲盛さんがJAL(日本航空)の再生に乗り出された時、経営理念や行動規範
がなかったJALに経営理念や行動規範という概念を持ち込み、それをJALフィ
ロソフィーとしてまとめ上げられました。そのJALフィロソフィーの中にも
この言葉を見ることができます。
稲盛さんは、自身のオフィシャルサイトで以下のように語っておられます。
「上司と部下の関係でも、信念もなく部下に迎合する上司は、一見愛情深い
ように見えますが、結果として部下をダメにしていきます。これを小善とい
います。「小善は大悪に似たり」と言われますが、表面的な愛情は相手を不
幸にします。逆に信念をもって厳しく指導する上司は、けむたいかもしれま
せんが、長い目で見れば部下を大きく成長させることになります。これが大
善です。
真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極め
ることなのです。」
今の日本では「パワハラ」ということが盛んに言われて、部下を厳しく指導
することが難しくなっています。
こうした風潮の中、読者の皆様も経営者、施設長といったお立場で職員指導
には、日々ご苦労されているのではないでしょうか。
30年前、パワハラという言葉もなかった頃の経験で私も深く考えさせら
れた出来事があります。
それは、私が富士通から転職してきて初めて福祉施設で勤めていた時のこと
です。その当時も今も一部の福祉施設では、現場のスタッフは走り回って忙
しいのに、事務所にいる施設長や事務員は座ってばかりで暇にしているのだ
から、少しは現場を手伝ったらどうかという意見がよく聞かれます。
ご多聞に漏れず、私が転職してきたその施設でも施設長が朝夕の送迎を自ら
行い、それ以外の時間も現場にいるような状態でした。
先の稲盛氏の言葉を借りれば、現場の声に負けて、「信念もなく部下に迎合
する上司」のように私には映りました。
こうした信念のない態度行動が、小善であり、ゆくゆくは大悪となって組織
をダメにするのではないか。
「嫌われたくない、良い施設長と思われたい」という信念のなさが組織にと
っては大悪につながるのではないか。
その当時、私はこの言葉は知りませんでしたが、今思うとこの違和感だった
のだと思います。
「人の振り見て我が振り直せ」ではありませんが、私自身この施設長の行動
を見ながら、深く自戒した記憶があります。
部下を持つ立場の人間は、「嫌われる勇気」が必要ではないでしょうか。
それは理事長や施設長ばかりではなく、現場の課長、係長、主任、副主任、
あるいは先輩の立場にある人間に等しく求められることではないか。
施設で組織上の問題を引き起こしている多くの場合、ここに問題があるよう
に私は感じています。
実は、「小善は大悪に似たり」には続きがあります。
それは「大善は非情に似たり」です。
一見、非情に見えることが結局は大善につながるという意味だと思います。
実際、理事長や施設長、あるいは現場の役職者が「嫌われる勇気」を持って
職員スタッフに接している福祉施設では、職場の不公平感はずっと少ないよ
うに感じています。
私のクライアントのある社会福祉法人では、職員を巻き込んだプロジェクト
活動で「ミッション・ビジョン・バリュー」を策定しました。
今年の4月から半年のプロジェクトでほぼ固まりました。
ご承知の通り、ミッションとは経営理念。ビジョンとは将来のありたい姿。
バリューは価値基準です。
ミッションとビジョンは、法人組織の外に向けた発信であり、バリューは、
組織の内側、つまりそこで働く全職員に向けた発信だと言われます。
この法人の「ミッション・ビジョン・バリュー」は、来年早々、職員に向け
て発信する予定ですので、ここではその詳しい内容について触れることは
できませんが、このバリューである価値基準が「大善」ということになるの
だと考えています。
この「大善」を役職者が「嫌われる勇気」を持って浸透させ、職員みんなが
実践してくれるようになったら、きっと素晴らしい施設になるのではないか
と、その施設の施設長と共に大きな期待を寄せています。
何でも「パワハラ」で済ましてしまう今の日本の現状に対して、大きな危機
感を感じますが、愛情をもって大善に向かう勇気こそが、今、この日本の全
てのリーダー層に求められていることではないでしょうか。
今回は、「小善は大悪に似たり」というテーマで書いてみました。
以上、皆様の何かのご参考になれば、誠に幸いです。
お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。
次の第66号は、12月10日頃に配信致します。
1.内容は、興味がもてますか?
2.疑問点、ご意見はありますか?
3.その他、感想、希望テーマ等
差し支えない範囲で、日々お考えになっていることをご意見
くださると、テーマ選定や内容を考える上での参考になりま
すので、お気軽にご返信頂けますと幸いです。
※感想やご意見は、当方の励みになりますので、是非宜しく
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