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2020/06/16 「福祉とビジネス」

こんにちは。

 

福祉マネジメントラボの大坪信喜です。

 

 

新型コロナの感染が徐々に落ち着きつつある一方で、実体経済への影響

 

がいよいよ深刻化しています。

 

唐突ですが、東海道新幹線がドル箱のJR東海は大丈夫なんでしょうか。

 

私が東海道新幹線に最後に乗ったのは319日。

 

岡山から新横浜まで「のぞみ」を利用しましたが、私が座った車両には、

 

私一人しか乗っていませんでした。

 

現時点では少し回復してきているようですが、現状340%の乗車率の

 

ようです。

 

県をまたいだ移動はまだ解禁されていませんし、リモートワークやオン

 

ライン会議ばかりになって、それが政府の言う「ニューノーマル」なら、

 

それこそ新幹線も不要不急の存在になってしまうのではないか。

 

ましてや、リニア新幹線などは、完全に不要なものとなるでしょう。

 

東京から京都まで遊びに行こうとすると鈍行を乗り継いで8時間掛けて行く

 

ようなことになってしまわないかなど,余計な心配をしています。

 

 

コロナ以前の東海道新幹線は、ウイークデイに限っていえば、9割方が

 

ビジネスマンで、しかも満席でした。

 

今後、旅客機業界も含めて、政府から兆円規模の資本注入がなされる

 

のではないかと想像しています。

 

翻ってわれわれの業界では、現在、約900ヵ所の介護事業所が休業を余儀

 

なくされています。今後、再開する事業所もあると思いますが、このまま

 

廃業する事業所も少なくないでしょう。

 

また、病院経営にも深刻な影響が出ているようです。

 

今日(612日)の神奈川新聞には、

 

「神奈川県内の148病院の4月の経営状況は、平均の医業利益が6739万円

 

(13・1%)の赤字。前年同月より5762万円減少(11・4ポイント悪化

 

となった。全日本病院協会などが実施した全国調査の平均は、3698万円(8・

 

6%)の赤字で、全国水準よりも大きく悪化した形だ(神奈川県病院協会調べ)。

 

と出ていました。

 

全国平均の病院収益が▲8.6%で神奈川県平均の病院収益は▲13.1%。

 

神奈川県内の平均の方が、5%近く赤字幅が大きいようですが、例の横浜港に

 

停泊したダイヤモンドプリンセス号の感染者を受入れた影響が出たとの分析

 

のようです。

 

いずれにしても病院経営は、4月の1カ月で10%前後の赤字が出ているわけです。

 

国は、第1次補正予算と第2次補正予算を合わせて200兆円規模の財政支援

 

をしているといいますが、医療福祉介護業界が使える財政支援には何がある

 

のでしょうか。

 

そのあたりについて書きましたので、ご興味のある方は以下をご覧下さい。

 

https://fukushi-mng.jp/corona/

 

 

さて、今月もご縁に感謝してメルマガをお送り致します。

 

「福祉介護事業の経営者・施設長のためのメルマガ通信」第24

 

 

最近、「福祉ビジネス」という言葉をよく耳にするようになりました。

 

これは、福祉に関連したビジネス、あるいは福祉周辺のビジネス程度の意味

 

かと思いますが、「福祉」と「ビジネス」を分けて考えた場合、どこまでが

 

「福祉」でどこからが「ビジネス」なのでしょうか。

 

特養やデイサービス、障害者施設や保育所など、いわゆる福祉ビジネスで

 

働く職員さんたちが、「われわれは福祉をやっているのだから儲けてはいけない。」

 

とか、「利益は残さず、職員に分配すべきだ。」という意見を聞くことがあります。

 

果たして福祉ビジネスは、利益を出してはいけないものなのでしょうか。

 

あるいは、福祉ビジネスといえども、利益は出すべきでしょうか。

 

明確に線引きされて語られることが少ないこの問題について今回は、考えてみたい

 

と思います。

 

福祉もビジネスも経済活動に変わりありません。

 

一般的に経済活動とは、「土地と労働、資本をフルに活用して、サービスを提供し、

 

その結果、財を生み出すもの。」といわれています。

 

 

 

「福祉」というとなにやら非営利なもの、金儲けや営利と無縁なもの、利益を上げて

 

はいけないものというイメージがあります。

 

たとえ経済活動であったとしても「財(利益)は生み出さない。生み出す必要が無い。」

 

と。

  

一方、「ビジネス」は、金儲け、利益、営利目的のようなイメージで、そもそも

 

財(利益)を生み出さなければ、続けていけません。

 

そうすると、「福祉」と「ビジネス」の違いは、同じ経済活動であっても、

 

財を生むか生まないかで、線引きできるのではないでしょうか。

 

日本の福祉は、高齢者福祉・障害者福祉・児童福祉の3つに大別されます。

 

この3つの福祉分野で財を生むもの、生む必要があるものが「ビジネス」で、

 

サービスだけ生産して、財を生まないもの、生んではいけないものを「福祉」

 

と定義してみたいと思います。

 

ご承知のように高齢者福祉の中の「ビジネス」は介護保険事業です。

 

介護保険事業を営んでいる経営体は、社会福祉法人、医療法人、株式会社、

 

有限会社、NPO法人、生活協同組合、農業協同組合と全部で7つあります。

 

この7つのうち、社会福祉法人だけが非営利団体で、他はすべて営利団体です。

 

営利か非営利かは課税されるかされないかの違いです。

 

営利団体は利益の約3割が税金として徴収されます。

 

ですから、医療法人、株式会社、有限会社、NPO法人、生活協同組合、

 

農業協同組合が行なう介護保険事業は、純粋な「ビジネス」と考えること

 

ができると思います。

 

一方、非営利である社会福祉法人は、税金は徴収されません。

 

しかし、非営利だからといってビジネスではないかというとそうではありません。

 

なぜなら財(利益)を生まないと継続できないからです。

 

財を生まなくても継続できるのは、国や自治体が行なう事業だけです。

 

財を生まなくてもいい、生んではいけないというと往々にして非効率になります。

 

生産性は度外視されます。今回の持続化給付金事業などはその最たるもの

 

でしょう。

  

脱線しましたが、営利と非営利では、その財(利益)の使い方が違うだけです。

  

非営利団体としての社会福祉法人には、課税されない部分を「福祉」に再投資

 

するという役目があるわけで、利益そのものを上げてはいけないということでは

 

ありません。

 

ですから、社会福祉法人は非営利であっても、その多くは「ビジネス」です。

 

(高齢者福祉の措置制度で運用されている養護老人ホームなどは「福祉」

になりますが。)

 

利益をあげることで、地域行政から要請される、赤字覚悟の福祉にも積極的に

 

協力して、その非課税部分を地域に還元していくという考え方になると思います。

 

これは、市町村社会福祉協議会も同じ考え方でしょう。

 

本体の地域福祉事業は、すべからく赤字です。なぜなら、行政からの補助金が

 

削減され続けているからです。

 

行政から補助金が削減されている多くの市町村社会福祉協議会は、介護保険事業

 

という「ビジネス」で利益を上げて、本体の地域福祉(純粋な福祉)の赤字を補填

 

しています。

 

 

つぎに、障害者福祉はどうでしょうか。

 

「福祉」と「ビジネス」という枠組みに於いては、障害者福祉も高齢者福祉と同じです。

 

障害者福祉の中の「ビジネス」は支援費事業です。

 

支援費事業を営んでいる経営体は、同じく社会福祉法人、医療法人、株式会社、

 

有限会社、NPO法人、生活協同組合、農業協同組合と全部で7つあります。

 

しかしながら、支援費事業は介護保険と違って、100%国の税金で運用されています。

 

ここが介護保険事業と大きく異なるところです。

 

介護保険事業と同じように報酬改定がありますが、基本右肩上がりです。

 

介護保険は5割が保険料ですので、右肩上がりでは国民の理解は得られません。

 

一方、障害者福祉は国の予算ですから、右肩上がりでもどこからも文句が出ません。

 

介護保険制度の利用者は「応益負担」ですが、支援費は「応能負担」という問題

 

もあります。

 

介護保険と同じように行政処分としての措置制度から、利用者との直接契約に

 

変わりましたが、実際には、措置制度時代の計画経済の時とその枠組みは大きく

 

変わっていません。

 

こうしてみると、支援費事業の場合、介護保険事業に比べると「福祉」と

 

「ビジネス」が、渾然一体となって、運用されているように見えます。

 

ただし、株式会社が多数参入している放課後デイや障害者のグループホーム事業

 

などは、明らかに営利目的の「ビジネス」といえるでしょう。

 

最後が児童福祉です。

 

JRなどが行なっている駅ナカ保育や教育事業などを手がける大手企業が参入

 

している保育事業は、ビジネスです。

 

しかし、社会福祉法人の認可保育所は、措置制度の名残が至る所に残っていて、

 

「福祉」に近い存在のように思えます。

 

措置制度というのは、収入(売上)が保証されます。

 

サービスを競って稼働率を上げ、収入(売上)を増やすという必要がありません。

 

そもそも保育所の数が足りません。

 

基本、その月の初日に利用者が在籍していれば1ヵ月の収入は丸々保証されます。

 

そのかわり、財(利益)を残すことが禁止されます。色々な足かせがあります。

 

当然ながら、措置施設である児童養護施設も「福祉」でしょう。

 

ところが、財を残すなと言われ続けてきた児童養護施設や認可保育所などは、

 

建替えの資金が貯まっていないため、事業継続が危うくなっているところ

 

が多くあります。

 

国は補助してくれませんので、社会福祉法人として措置施設以外のビジネスで

 

利益を出し、建替え資金を工面していかなくてはなりません。

 

社会福祉法人は、「福祉」の部分を継続していくために、「ビジネス」で

 

しっかり利益を出す経営をしていくことが求められているのではないでしょうか。

 

以上、何かのご参考になれば誠に幸いです。

 

お忙しい中、最後までお読み下さり、有難うございました。

 

次の第25号は710日頃に配信致します。

 

以上、

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